![]() ![]() ![]() ![]() |
![]() |
| Usea News select | ■ ■ ■ ■ "OUR SCIENCE" Topic September 20 , 1998 特集「大陸を守る巨人」 ユージア大陸の古都サンサルバシオンの郊外に「迎撃砲」はある。 FCU提唱による防衛構想、STN計画に基づいた大陸防衛型の隕石迎撃基地だ。 ユリシーズの最接近を10ヶ月後に控えた秋、我々は試験運用が進んでいる第二迎撃エリアを訪れた。 |
|
■ ■ ■ ■ 「大陸を守る巨人」 大きいとは聞いていたが、大きい。 広大な敷地は既に小都市程もある。 単一の目的を持った施設としては、他に類を見ない規模だ。 円形に広がるコンクリートパネルは幾万も積み重なり、太陽の光をじりじりと取材班の顔に照りつける。 資材を運ぶクレーン達が、恐竜の様に群れている。警備にあたるUTO機が耳を劈き、 様々な技術者が蠢く様は蟻の集団を思わせる。 その向こうに巨体が姿を現す。天空を睨む巨大な砲塔群が、我々を守る要だ。 円形状に聳え立つ様は、太古の記憶を呼び起こす。まるでストーンヘンジだ。 STN計画実行委第28設計局局長ヤン・トミック博士の案内によると、現在の進捗状況は「先日初号砲の試射が終わったので、 80パーセントの完成度といって良い」らしい。 施設全体はピザのピースのように8つに別れ、現在はそれぞれが独立して試験運用を行っている。 各一基ずつ迎撃砲を有し、最終的には統合された制御系により、全方位迎撃を可能にする。 射程は半径1200kmにおよび、ほぼユージア大陸全土をカバーするかたちだ。 こうしたスペースガード構想は以前より提唱されてきたが、これほどまでに具体性を持った計画は過去に類をみない。 しかも絶対の成功を目的とするので、ハードウェア、ソフトウェア両面に、各企業体、研究者達の驚異的な技術が注ぎ込まれている。 ■ ■ ■ ■ 「絶対の信頼性を目指して」 迎撃砲は正式には「120cm対地対空両用磁気火薬複合加速方式半自動固定砲」という、 レールガンの構造を拡張したものだ。これはまず火薬をプロペラント(推進薬)として使い、 次に磁力を使ってさらに砲弾を加速するハイブリッド方式で、弾速は6km/secまで加速可能だという。 「当初は8km/sec(=マッハ23=第1宇宙速度)までの加速を目指した。しかし研究に費やす時間と確実性を鑑み、 現在の実用レベルに即した技術で開発を進めている」 はじめに火薬を使うのは、磁力だけで加速しようとすると発生するジュール熱(導体に電流を通した時、 電気抵抗によってその導体に発生する熱)によって砲身が融けてしまう理由からだ。 また大量の電力をコンデンサーに貯えねばならず、連続発射させるにはそれらの併用が必要だったのも大きい。 レールガンは大量の電力を1度に消費する為、コンデンサーに電力を蓄える必要がある。 このことが隕石迎撃プロジェクトの最大の問題であった。まず消費される膨大な電力自体は専用の原子力発電機でまかなうとしても、 それを蓄積するコンデンサーのサイズがとてつもなく巨大になってしまう。 落下位置の特定が困難な隕石を迎撃するとなると移動式にすることも考えられたが、 レールガンそのものはまだしもコンデンサーが巨大であるため現実的でなかった。 なにしろ敷地内の20%が蓄電器によって埋め尽くされているのである。 またレールガンの発射の度にコンデンサーへの充電が必要である為、連続発射が難しい。 百発百中の精度を実現できたとしても、複数個の隕石が落ちてくることに対応できないでは意味がない。 プロジェクトチームはこれらの問題に対し、8基のレールガンを円形に並べることで解決をはかった。 360度全天をカバーし、それらが交互に撃つことで複数の隕石の落下にも対応できるようになった。 また当然1つの巨大な隕石に対する破壊力を増すことにもなるし、いくつかの砲を1つの目標に向けて同時に発射することで命中率を上げることもできる。 多重に多重を重ねた信頼性の確保。多くの人命のかかった最優先プロジェクトであったからこそ許された考えである。 それを可能にする制御系にも驚異的な精度が求められた。施設の地下にはスーパーコンピュータ群がある。 これは8台のスーパーコンピュータを1024セット用意し、高速ネットワークによって並列した計8192台から構成されるものである。 1台のコンピュータは秒間90億回の浮動少数演算を行い、システム全体では1秒間に100兆回に達する。 軌道上の衛星も含む各地の観測所から送られてくる情報をもとに、ユージア大陸全体の大気の状態をシミュレートし、 隕石の落下地点を計算する。そこへレールガンから弾が発射される。 砲弾に関してはいくつかの種類が用意されている。技術的に最も難しいAPE弾(Armor Piercing Explosive Ammunition:徹甲榴弾)は、 直接隕石に命中させ、内部で爆発させることで粉々に砕いてしまうのが狙い。小さい隕石に対しては威力よりも命中力を重視して、 榴弾を撃つこともできる。また博士は言明を避けたが、有効範囲が広い特殊砲弾についても存在する。 これは複数の破片をまとめて処理する上で欠かせないものとして、特別立法下での期限付きの使用に留める予定だという。 あまりにも絶対的な能力に、我々は畏怖の念を禁じ得ない。しかし博士は続ける。 「これはあくまでも人類の未来を開くためのものだ」 事実、開発チームはレールガンを電磁飛翔体加速装置(EML: Electro magnetic Launcher)の一種と定義し、 運動エネルギー兵器(KEW: Kinetic Energy Weapon)との呼び名を避けている。 ■ ■ ■ ■ 「迎撃砲、それを守るもの」 施設の北東に位置する空港エリアでは、UTO指揮下の航空機が常時18機による警備活動を行っている。 輸送機が飛来する度、2機のF15が轟音を上げてエスコートに向かう。その様はまさしく戦時下の状況だ。大陸を守る要、 そしてそれを守る航空機。辺り一帯がものものしい雰囲気に包まれる。 「この計画に参加すると聞いた時、栄誉とプレッシャーと好奇心が同時にやってきた」 STN警備飛行隊所属ジョン・ハーバードは、かつてクーデター軍と渡り合った経歴をもつ猛者だ。 長い傭兵生活を終え、古巣のUTOに戻ってきた事になる。インタビュー中も整備士とのやりとりに余念が無い。 仲間からの信頼も厚く、開発スタッフとも知り合いが多い彼は、ヤン博士とは同じデイタイムの勤務ということも手伝って、 一緒に食事をとる事もあるという。 「全世界の目がここに集中している。なにせこれ(迎撃砲)が役に立たなかったら、お終いだからね。それと同時に様々な人間が、 これが持つ潜在的な能力に気づき始めている。もし万が一の事が起こったら、当然我々は黙ってはいないよ」 航空宇宙学会により建築予定地が決定された一昨年春、この地にはサンサルバシオン市民15000人による「人間の輪」が出来た。 いくら科学的な根拠に基づいていた結果だとしても、大陸を防衛する命題はこの地には荷が重すぎる。 歴史的な背景に配慮が必要だという声もある。さらにUTO軍による支援は、一部の国の感情を刺激するものともいえる。 こうした前例の無い活動は、UTOも含む関係国への圧力という形で新たな緊張を生む危険性もあるのではないだろうか。 「もちろん極めて重大な責任を負う計画だ。そこには未知への不安もある。しかし全世界的な共同計画にこうした問題は付きものだと思う。 UTOによる警備活動もスタッフは信頼しているし、安心して仕事に取り組めている。人々はまずこのことを認識して欲しい。 この地で働いている人間は皆同じ気持ちであるということ。そしてそれは全ての国の人々が共有している気持ちであることを」 「お互い誇りある仕事だ。いつか誰もがこの計画を理解してくれると信じている」 笑顔が見える。そして二人は声をそろえる。このサークルは絶対の信頼の具現であると。 隕石落下という現実まで後10ヶ月。信じられない程の技術と労力を費やした巨人計画は最終段階に入った。 大いなる運命を託された彼らの働き。その直向きな姿勢を目の当たりにすれば、人類史最大の窮地に追い込まれても尚、 人間は生きる希望を捨ててはいないと確信できる。 ■ ■ ■ Usea News select |
|
Top |Information |World / Usea News / Aircraft |Staff |Download
|